税金教室の先生をして感じたことと、 税理士の将来について思うこと

2018年3月19日by nwadmin

最近、租税教育推進協議会という組織が中心となり、「租税教育」というものが行われています。
児童・生徒さんたちに、税金に関する基本的な知識を身につけてもらおうという趣旨で、小学生の時からこういった授業の時間がもたれています。

講師には、税務署の方のほか、私のような税理士などの外部の専門家がつとめるとのことなので、先月になりますが、白馬村の小学校で1コマの授業を行ってきました。

ところで自分が小学生だった時には、このような授業を受けた記憶がありません。おそらく中学・高校になっても、税理士が授業をしてくれた記憶はありません。(寝ていただけでしょうか。)

実は租税教育の取り組みに力を入れることになったのは、案外最近のことのようです。平成23年度税制改正大綱において、「租税教育の充実」について初めて閣議決定されたとのこと。ここ5年くらいの間で、にわかに力を入れていている分野であるようです。

日本では、源泉徴収制度という素晴らしい仕組みの恩恵で(?)、税について意識する機会が他国に比べて乏しいと個人的に思っています。税理士として働いていた私ですら、サラリーマン時代には毎月払っている税金についてほとんど意識することなく、いつも給与明細は手取りだけ確認していたような感じです。もちろん、そのようなことなく、きちんと確認している方もたくさんいらっしゃるとは思いますが・・

 
 


小学生に税金について知ってもらうということ

小学校に足を踏み入れたのは、もしかしたら卒業以来かもしれません。
下駄箱にずらっと並ぶ靴が、いかついスノーブーツばかりなのは、まさに白馬ならではでしょう。

今回は2クラス合同で、約50名ほどの生徒さんに授業を行いました。パワーポイントでの説明を中心に、45分間の授業です。途中でビデオ視聴をはさみ、「税金のない世界がおとずれたら、私たちの生活はどうなってしまうのか?」といった内容を知ってもらいました。

正直、小学生と身近に触れ合う機会というのはあまりなく、実家で正月に開催される新年会ぐらいなものです。果たして小学生に説明するにあたって、「どのくらいの難易度の言葉まで理解してくれるのだろう?」というのがよく分かりません。できるだけ平易な言葉で説明するよう心がけましたが、感想を直接聞きたかったなと思います。

ただ、「集められた税金は、最終的に○○省というところにいくのですが、さて何と言うところかわかりますかー?」「・・財務省?」とちゃんと回答が返ってきたり、

「集められた税金の使いみちは、○○で決められているのですが・・みなさんのご両親が選挙で選んだ、国の代表が集まるところです」「・・国会!」と手を挙げてくれたりしたので、それなりに反応してくれたのはよかったなと思います。自分もそうだったように、授業で税金のことを知って税理士という仕事に興味を持って欲しいとまでは思いません。小学校の授業をきっかけに、「○○に将来なりたい!」と思えれば、それはそれで素敵なことだとは感じますが。ただ毎日払う消費税が、巡りめぐって自分の教科書代になってるんだなぁ、という感覚だけでも身につけてもらえたらいいんじゃないかと思っています。

 

 

将来なりたい職業の選択肢に、果たして税理士は入るのか?

近年、少子化の影響もあるとはいえ、年々税理士試験の受験者数は減ってきています。それとともに、世の中の流れをまともにうけ、定年のない税理士の平均年齢もだいぶ高くなっているのが現状です。

税理士試験というのは、片手間に勉強して受かるものとも思いませんし(一部の天才は除きます)、大概は資格の学校などに通うのでそれなりの費用もかかり、胸を張って投資効率の良い職業選択ですよとは言えないというのが私見です。

さらに私が税理士試験の受験をしていたのはもう10年以上前になるのですが、当時と今の世の中を比べても、会計業界の変革は結構ドラスティックだなと思っています。特にAIによる会計税務ソフトの機能の進化と、国としてもe-taxの普及にかなり積極的に取り組んでいる点が、業界にとっては顕著な変化であると感じています。

こうした中で、税理士という職業の存在意義について、否が応でも考えさせられる世の中になってきています。なおこれは税理士という職業に限った話ではなく、他の士業や業種においても様々な議論があることでしょう。歴史的に見ても、世の中の流れと、職業の選択肢には大きな関連があります。学生さんたち向けに、税金教室を開催するということも、税理士という職業を知ってもらうひとつのきっかけになると思いますし、自身もそういった活動に携わることで学ぶことが多くあると感じています。一人でも多くの方に税理士になって欲しいというよりは、この業界に興味を持っている方と、税理士という職業についての今後の有り方を一緒に考えていきたいと思っています。

 

 

税理士の将来とAIについて

税理士という業務は独占業務であり国家の財政の基盤を成す仕事であること、また既得権益が絡んでいることから、なくなる職業であるとは到底思えません。

ただ確実に言えるのは、レシート類を預かって会計数値に置き換える いわゆる記帳代行業務はその多くが自動化されていくことでしょう。何年後かは分かりませんが、経理の知識が何もないスタッフでも、とにかくレシートをスキャンしておけばそれなりの決算書が自動的に出来上がる世の中になるはずです。

それと同時に、とりあえず決算書っぽいものは完成して税金も自動計算されたけど、果たしてこれで何も問題はないのだろうか?税務調査が入っても大丈夫なのか? こういったことを思うお客様がほとんどでしょう。税務調査も、ある程度署内での機械化は進むかもしれませんが、対面で行われる実地調査はこの先もあるはずです。そんな時、納税者にとって税理士は心強い存在となります。

税理士の役割は税法の観点からのアドバイスと、それによる安心を提供すること、そういったソフト面によりシフトしていくことになるでしょう。

あるいは、アンテナを張ることでどんな産業にもブルーオーシャンはあります。例えば地域で見た場合、白馬やニセコは非居住者の投資家様向けのサービス、また分野で見た場合、非銀行間決済や仮想通貨取引について、税務の観点から判断すべき事項がより増えいくのは確実です。

世の中のニーズと、それに対して提供できるサービスに一層の付加価値をつけていくにはどうしたら良いのか?常に自問自答できる税理士でありたいと思っています。

ご不明点等は、下記からお気軽にお問い合わせください。