充当申出書 – 確定申告時に納付額と還付額を相殺する方法

2018年9月19日by kaorisato

先日確定申告を行った際に、納付額と還付額が両方あったため、充当申出書を提出する機会がありました。
納付額と還付額が両方生ずるケースとは、例えば以下のような場合が考えられます。

 

◎法人税の中間納付額があるが、当期の所得が少なかったため、中間還付になる
◎消費税は還付であるが、法人税は納税となっている

 

通常であれば、還付は還付として受け取り、納税額は別途納付するというのがスタンダードです。資金繰りの関係でどうしても相殺したいということもあるかもしれませんが、よほど状況が逼迫していない限り、還付のタイムラグもそこまで大きくないので通常通りのやり方で納税することが多いと思われます。
なお今回のケースは、外国法人の源泉所得税の還付でした。最近目にすることが多いケースで、概要はおおむね以下のように要約されます。

 

Example
①外国法人が平成20年3月に土地を4千万円で取得した
②その後空き地のまま保有しており、地価が上昇したため、平成30年3月に6千万円で売却した
③売却対価の6千万円について、源泉徴収税10.21%(6.1百万円)が控除された金額が入金された
④実際の納税額と源泉徴収税額の差額は、確定申告で精算することとなる(譲渡対価が大きい場合、還付となるケースが多い)

 

上記のケースの場合、譲渡益2千万円のうち23.4% の4.6百万円(中小法人の場合は軽減税率の適用もあり)が最終的な納税額となります。したがって、当該4.6百万円と、源泉徴収されている6.1百万円の差額1.5百万円が確定申告を通じて還付されることになります。

ただし、あくまで源泉徴収された金額は法人税から控除できるものであり、別途生じる地方法人税は納付ポジションとなることに留意が必要です。内国法人の場合、冒頭で触れたとおり、納税と還付の両方を行う形でも大概は問題がないでしょう。ただし今回は外国法人のケースであり、日本支店を持たない法人であったため国内の銀行口座がなく、納税に関しては納税管理人を置いている状況でした。

このような場合、地方法人税の納税資金を工面するために外国送金を行う必要があり、送金手数料も安くはありません。従って、地方法人税の納付額を、法人税の還付金と相殺する選択が良いとのことになりました。確定申告時に、このような申出書を添えて提出をすることで、地方法人税の納付を行うことなく、相殺後の金額が還付されるようになります。

*上記の例における法人は日本にPEがない外国法人(旧4号PE)のため、地方税の納税もありませんでした

外国法人による土地の売買は今後も増える傾向にあると予想されますので、こういったケースもより散見されることになるかと思われます。また譲渡対価の10.21%を源泉徴収せずに購入代金を支払ってしまう買主さんもいらっしゃり、そういった場合は後になって(資金負担者などの)問題を引き起こしてしまうことが多いので、外国法人や非居住者との不動産売買には十分な留意が必要となります。

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