税理士受験生時代の振り返り

2019年10月19日by kaorisato

少し前になりますが、会計人コースという税理士や会計士の受験生向けの雑誌で、コラムを執筆させていただきました。私の開業日誌という記事で、毎号独立した税理士から受験生の方へ、モチベーションがあがるようなメッセージが送られています。今回ご縁があって執筆させていただき、ほぼ忘れていた過去の受験生時代を思い出すいいきっかけのなったので、少し振り返ってみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受験の意味するところ

あらゆる”受験”と呼ばれるものに対し、モチベーションが影響する度合いというのは、非常に大きいのではないかと思っています。高校受験や大学受験であれば、どういった受験を目指すのかということは、ある程度周囲の環境によるものが大きいかもしれません。周りと同じように勉強する、あるいは逆に周りの環境から抜け出したいから勉強する、といった形です。 私はまさに前者で、基本的に大多数が向かう方向に安心感を覚えるタイプでした。人とは少し違う選択をできる人には、昔から羨ましいような複雑な気持ちを抱いていました。

ただ成人してからの受験は、その意味合いが、もうすこし個人的なものになると思います。そして受験に専念するためには、あらゆる外的要因をコントロールしなければなりません。

就職していく周りの目だったり、社会に出ない自分へ向けられる家族の目、あるいは養わなければならない家族のこと。とりわけ合格するまでに労力と時間を要する税理士のような試験に関しては、犠牲にするものが全くないと言うことはできません。

ただ試験合格というスタートラインを踏んだのであれば、そこから先をどう描いていくか自分次第で決めることができます。会計事務所や税理士法人で勤めるも良し、事業会社に勤めるも良し、全く違うビジネスをすることも自由ですし、独立開業も要件さえ満たせばすぐに踏み出せます。税理士試験への(あるいは他の資格でも)モチベーションは人それぞれだと思いますが、いずれにせよ、自分なりに現状からの強いステップアップを望んでいることが欠かせないかとは思います。ただ試験への費用対効果も、人それぞれであり、税理士試験も最終合格までたどり着く時間を考えると、誰もが向いているとは決して言えません。

 

 

税理士試験の制度

税理士は、会計科目と税法科目あわせて5科目に合格することで、税理士試験合格となります。人によりますが、毎年8月に行われる試験で2科目ずつくらい受験していくのがスタンダードです。

会計士試験と異なり長期決戦が可能なため、家庭を持ったり働きながらでも、1科目ずつ積み上げていくことが可能なのが特徴です。

私の場合は、会計科目は簿記の延長で割と楽しみながら解いていくことができました。財務諸表論の理論がどの科目よりも好きで、習得が早かったです。その一方で、法人税の理論暗記が苦しく、これ以上税法科目の試験を受けたくないと思い、大学院で学び一部試験免除をすることを選びました。経済系から法律系へ転向したため、大学院試験の受験勉強が予想以上に大変でしたが、修士時代を含めて本当に多くのことを学ばせてもらいました。 卒業してからはアカデミックな世界からは随分離れてしまい、自分は研究よりも実務のほうが基本的には向いているだろうとの自覚がありますが、今後はもう少し執筆含め研究よりのことをしていきたいと考えています。

 

 

百人百通りの働き方

税理士という職業は平均年齢が高く、その傾向は今後も変わることがないでしょう。税務署を退官された方たちが開業するケースも多く、また定年のない職業だからです。最近のLIFE SHIFTという本を読みましたが、ある意味健康でいさえすれば、今後何十年か税金漬けで稼ぐことは可能ですが、そうではないプランというのを常に模索している方がいいのでしょう。

一方で、いわゆる働き方改革と呼ばれるように、社会における働き方のスタンスは多様になってきています。インターネットとテクノロジーの進歩が年々加速しており、そういった技術を享受する人とそうでない人のギャップが広がっているようにも思います。

旧来型の税理士のスタイルは根強く残ると思いますので、いまから税理士を目指す方は、税務のみならず新しいテクノロジーやAI分野それ自体へのキャッチアップをすることが、この業界の特異性の中では1つの強みになるでしょう。

どのような受験スタイルをとるか、きっかけは人それぞれの状況次第です。合格さえしてしまえば、実務を通じてしか学べないことが山ほどありますし、勉強していない科目についても仕事が舞い込んできますので、学びを深める必要があります。その観点から、なるべく資格取得の早道を選択することも、合理的な判断かと思います。

そして大事なことは、自分が心地良いと感じるライフスタイルと自分が大切にしたいことを自覚して追求していくことだと思っています。忙しいという主観的な感覚にかまけている時に、自らを元の位置に戻すため、自戒の念をこめて書いておこうと思います。

 

まとめ

税理士という職業は、個人的には特に女性におすすめしたい資格です。家庭を持ったり子どもを持ったりしても、ライフスタイルに合わせながら、”専門性の高い”業務の量を自分の裁量でコントロールし働くことができるからです(専門性が高いほど、時間あたりの報酬単価は高いと言えるでしょう)。比較的既得権益に守られている業界でもあると思いますので、遠い将来のことはともかく、税理士試験の受験生が激減しているという状況を踏まえ、租税教室などを通じて税理士という職業を少しでも身近に考えてくれる人が増えればと思います。

ご不明点等は、下記からお気軽にお問い合わせください。